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2023年の多治見大窯焼成
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今年2023年は実家のガス窯を使えず素焼きができないので、数年前に素焼きを行って絵付けと志野釉を掛けた茶碗2つを多治見の穴窯焼成用に使うことにしました。
おそらく2019年頃に素焼きと施釉した茶碗でどんな絵を描いたかが思い出せません。そこで志野釉を剥いでみると、何と梅の絵が出てきました(冒頭の写真左)。この絵がとても良く描けているので、絵は消さずにそのままにして昨年購入した紅志野釉を掛けることにしました。茶碗の形はやや歪んでいます。大窯焼成の焼きに期待しました。
もう一つの茶碗は志野釉と絵を剥いで新たな絵を描くことにしました。上述した茶碗は梅の花でしたので本茶碗は秋をテーマにしました。最近、鎌倉時代の歌人 西行に興味があります。おくのほそ道で松尾芭蕉はかつて西行が訪ねた歌枕を辿っています。また、鎌倉時代の思想家で歌人の慈円について調べていたら新古今和歌集の入集歌数がトップの西行の歌が心に響きました。
「心なき身にもあはれは知られけり
鴫たつ沢の秋の夕暮れ」 新古今和歌集 362
本歌からアプローチして茶碗の絵を描くことにしました(冒頭の写真右)。

2023年11月末に3日間の窯焚きがあり、1週間後に窯出しになりました。焼成した茶碗2椀ともになかなか雰囲気が良かったです。言葉で適確に表現するのが難しいのです。 ともに釉薬の調子が均質な白色ではなくて、やや翳りを帯びていると言いましょうか。近くでもみると釉薬の中に細かな気泡が無数に不均一に入っていてこれが影響していることがわかりました。この釉調のせいか描いた絵が不鮮明になっていて、これもこれで良いかと思えます。下記に今回の茶碗の写真を掲載しました。
◎志野梅の絵茶碗(下記写真1~3) --- 表は上述した梅の花です。背面には3本の蕨を描きました。どちらを正面にしても良いと思います。高台は大好きな二重高台です。胎土は赤褐色に発色しています。ずいぶん前に成形した茶碗なのでどのような土を使ったかを覚えていません。長石が混じった土でなかなか味があります。この茶碗は妻がお気に入りで、早速 妻の専用茶碗になってしまいました。
◎志野茶碗 Shigi(下記写真4,5)--- この小ぶりの茶碗を上から見ると栗のような形にかなり歪んでいます。平らに叩いた表には鴫(Shigi)が飛翔するところを描きました。そして上から見てほぼ半円の背面には山と湖沼を描きました。口縁の緋色が秋の気配を感じさせてくれます。この茶碗もどちらを正面にしても良い雰囲気で、その日の気分で選択していただければと思います。歪んだ形状が成功している例ではないでしょうか。
 おそらく一般的にみれば、口縁の釉薬が一部剥げていたり、大きさの割に手取りが重かったり、志野釉の緋色があまり出ていなかったり、茶碗の歪が大きかったりと欠点を挙げればきりがありません。しかし、そういったものをあえて享受できる魅力があります。それだけ造り手の思いが込められているということでしょうか。あるいは、私自身の気持ちがすべてを受け入れられるぐらいに穏やかになったのかもしれません。このような心持ちで今後も作陶できれば良いかと思います。さて、来年はどのような志野茶碗を造ろうかと構想を練っています。また、久々に黒織部茶碗も造ろうと思っています。こちらの方はすでに描きたい文様が決まっています。

志野茶碗 梅の花
志野 梅の絵茶碗
背面の絵
梅の絵茶碗の背面の絵
志野茶碗の高台
梅の絵茶碗の2重高台
志野茶碗 Shigi
志野茶碗(Shigi)表に鴫の絵
Shigiの背面の絵
志野茶碗 (Shigi)背面に山と湖沼の絵

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