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 備前の父子展
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私が伊勢崎満氏の作品に出会ったのは30年程前、初めての備前探訪の時です。陶片を埋め込んだ土塀があり、鄙びた風情の門から茅葺屋根の陶房を訪ねました。展示室の正面には、満氏の緋だすきの大きな丸い壺と、緋だすきのとても大きならっきょう形の花入れがありました。満氏の緋だすきは、鮮やかな緋色ではなくて 茶褐色の梅干しのような渋い色です。渋い緋だすきと大きく美しい姿に魅了されました。その隣には、肩にぽちっと小さな耳の付いた徳利形の一輪挿しがあり、全体のバランスがとても良く、素晴らしいデザインだと思いました。 落ち着いた雰囲気の満氏の奥さんが作品の説明をしてくれました。実は、あの耳付きの一輪挿しが欲しかったのですが、当時の我々には買える額ではないと思い、奥さんが長男 卓氏の作品だというらっきょう形の一輪挿し(残念ながら耳は付いていません)を旅の思い出として購入しました(写真左)。
この時、後に人間国宝になる伊勢崎淳氏の陶房も見学したのですが、大きなオブジェの造形作品には全く興味がわかず、むしろ伝統的な水指がいいなと思いました。私は今でも伊勢崎満氏の作品のような古典を踏まえた正統派の備前焼が好きです。
 2021年になって、長年憧れていた伊勢崎満氏の作品を入手しました。写真中央の耳付きの壺です。丸っこい姿とぽちっと小さな耳の配置が絶妙です。私はこの壺を見るたびに、手でそっと黄色のゴマと丸い胴を撫でてしまいます。 購入してから気が付いたことがあります。それは、30年前に購入した卓氏の一輪挿しと焼き肌がきわめて酷似していることです。共に、上部には黄色のゴマがかかり、ところどころゴマ表面が粗くなっています。下部の褐色の緋色と、還元炎によって生じる青い桟切りのコントラストも見どころで類似しています。この2つのやきものは、30年以上前に父子で焚いた登り窯で焼成されたものかもしれませんね。
 写真右端の三角花入れも最近入手した満氏の作品です。桃山時代の備前三角花入れ(2019年 The 備前 の図録 作品I-1)に素晴らしいものがありますが、それに引けを取らない作品だと思います。3面の焼き肌が各々異なっていて楽しめます。端整な造りの口縁をぐるっと見ると焼き肌の変化を見て取れます。 ただし、花を入れたときにどの方向を正面にして飾るか? かなり悩むと思いますが、それも愉しみの一つです。耳付き花入れの場合には表と裏で選択肢は2つですが、三角花入れの場合には少なくても6方向の選択肢があるからです。近い将来、花を入れた姿をUpしようと思います。

伊勢崎満作 耳付き壺
 耳付き壺の焼き肌
伊勢崎満作 三角花入れ
 伊勢崎満作 三角花入れ

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