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2022年の志野(2)
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2022年の志野(1)で紹介しましたように今回の志野茶碗には曽木もぐさ粘土を使い、絵付けはコハクチョウを描きました。 そして、釉薬は比較的低い1200~1220℃で溶けピンホールや緋色が出やすいというものを使ってみました。 コロナ下ということもあり、今回も施釉したものを多治見の安土桃山陶磁の里へ郵送して、焼成後の作品を送り返してもらうことになりました。
10月31日に施釉した茶碗を送り、窯入れが11月19日、焼成は11月25日~27日、窯出しが12月4日といった日程で本焼成が行われました。

2022年の大窯の焼成はとても上手くいきました。焼成した3碗すべてに満足するというのは珍しいことです。冒頭写真の中央と右端の茶碗は前述した新しい釉薬をつかったもので、その特徴であるピンホールや緋色がきれいに出ています。焼成の条件が釉薬にぴったり合っていたようです。なお、3碗ともにサヤに入れて焼成しました。 以下、下記写真を参照しながら各茶碗について述べます。
(1)志野茶碗 銘 飛翔
コハクチョウが力強く飛び立つ姿を描きました。この茶碗の志野釉薬は長年使っている"志野2号"というものです。3碗の中では緋色は出ていませんが、溶け切らずしっとりとした釉薬の調子や、光線の具合によって少し青みがかかった色合いが好みです(微妙な白色を言葉で表現するのは難しいです)。緋色は口縁に控えめに出ているのも良いですね。
(2)赤志野茶碗 銘 山の暮
茶碗全体にオレンジ色の緋色とピンホールがでています。 新しい釉薬の特徴が良く出ています。3碗の窯内の焼成場所がほぼ同じとすれば、志野釉薬の違いによってずいぶん違った印象のものができます。 山の端の絵はよく描けていると思います。全体の緋色と相まって山の静かな夕暮れを感じます。 背面の絵付けにはコハクチョウの飛ぶ姿を描きましたが、少々小さすぎて、妻から「かわいい小鳥さん」と言われてしまいました。 この茶碗の見込みはとても広くておおらかな感じがします。緋色の激しい外側と異なり、内側はピンホールのない白くスムースな面です。妻はこの茶碗を大変気に入っているようです。
(3)十文字割高台茶碗 銘 岳陽
桃山時代の名品"朝陽"の写しのつもりで造ったのですが、全く異なる雰囲気になりました。 ピュアーな白い志野釉とあざやかな緋色の対比がとても美しいと思います。 この茶碗も新しい釉薬を使ったのですが、上記 赤志野茶碗とは釉調が全く異なります。焼成時の窯内の位置と炎の流れが微妙に異なっていたからでしょうか? 口縁のところどころ釉薬が剥げ落ちていてオレンジ色の緋色が出ていて単調な器形に対してアクセントになっています。施釉した時には均一に釉薬を掛けたのですが、おそらく段ボールに入れて郵送した時、あるいは窯入れのときに手で触れて剥げてしまったと思われます。偶然の面白さと言いましょうか? さて、初めて造った十文字割高台ですが使ってみると手取りが悪く扱いにくいことがわかりました。こういったことは経験してみないとわからないことです。有名な三輪壽雪の鬼萩割高台茶碗は扱いの難しい茶碗ではないかと思います。 私はこの大きく扱いにくい茶碗を時々枕元においてにんまりしています。
 焼成したやきものが届いてさっそく一服して茶碗の使い勝手を観てみました。 そして、師走の晴れた日に 21世紀の森公園へ茶碗の撮影に行きました。室内で茶碗の写真を撮るよりも広々とした自然に中で撮る方がこの茶碗に相応しいし、何よりも自分が楽しめると思ったからです。

志野茶碗 銘 飛翔
 志野茶碗 銘 飛翔
赤志野茶碗 銘 山の暮
 赤志野茶碗 銘 山の暮
十文字割高台茶碗 岳陽
 十文字割高台茶碗 岳陽

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