Menu

美濃の名工 十右衛門
点線画像

加藤十右衛門は、1894年(明治27)~1979年(昭和49)に生きた美濃大萱の陶芸家です。私が私淑する荒川豊蔵とほぼ同年代の人です。 私が持っている茶碗の中では最も古いものです。ちなみに私は いわゆる骨董品の収集をしません。 この茶碗の見込みには細かではっきりした貫入が入っていて、前の持主が長年使い込んだことがわかります。私は見込みに貫入が入っていたり、使用されて汚れてしまっているものは基本的に購入しないことにしています。しかし、この茶碗の持つ重厚な雰囲気、シンプルな絵付け、志野釉の調子と緋色が、まさに桃山陶を彷彿とさせるものだったので手に入れることにしました。
 使ってみて気が付いた点を述べたいと思います。 桃山陶のような堂々とした大きさ(口径13.4cm、高さ10cm)の茶碗ですが、手取りはとても軽いです。良質のもぐさ土をつかっているのでしょう。十右衛門の時代は未だゴルフ場が少なく山から良質のもぐさ土が採れたのではないかと思われます。大きな茶碗ですが、口縁はややすぼまっていて一服後に見込みを拭くのに手が入りにくいことがわかりました。まるで井戸の底のようです。
志野釉はネットリしていて、桃山陶片の釉調に近いと思います。 絵付けは筆に勢いがありシンプルで味があります。表は草文で鄙びた雰囲気の絵です。背面は桜文でしょうか。肉厚で山道のような口縁には、オレンジ色の緋色がきれいです。
前述したように見込みには貫入が入っていて、見込みの側面が立ち上がる基部には沢山の小さい孔 ピンホールが出ています(下記写真)。Blogの「卯の花と志野茶碗」でも書いたように、まさに卯の花が鈴なりに咲き誇る様子を連想させます。一般的に、見込みの面は中央の茶だまりは凹んでいて平滑な面で造られるのが多いのですが、この茶碗の見込みの面はかなりでデコボコしています。こういったことは使ってみないと分からないことです。 高台はサラリと削っており技巧的ではありません。高台周りの志野釉はネットリとした白色に部分的にオレンジ色の緋色が出ています。このように見どころが満載です。
桃山陶を感じることができるこの名工の茶碗をとても気に入っています。今後も大切につかって次世代の繋ぎたいと思いました。

加藤十右衛門の志野茶碗
 加藤十右衛門の志野茶碗
背面の絵付け
 背面の絵付け
太い口縁の造り
 太い口縁の造り
見込みの貫入とピンホール
 見込みのピンホールが卯の花を
高台と志野釉
 高台と志野釉

Blog 最近の投稿


分野別(過去の投稿)

 自作の志野 年度別


 旅行


 美術工芸、その他


 やきもの