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本物は違う 古伊賀展
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2023年10月より五島美術館で古伊賀「破格のやきもの」展が開催され、満を持して行ってきました。 私は特に伊賀の花入れが大好きです。かつて伊賀上野へ伊賀焼の第一人者と言われた谷本光生氏の窯を訪ねたことがあります。しかし、伊賀上野に行っても古伊賀のやきものを見る機会はありませんでした。古伊賀の名品をまとまった形で観るのは今回が初めてです。本展覧会は伊賀の花生が35点、伊賀水指が25点、伊賀の香合、茶入、茶碗もあり大規模なものです。 古伊賀の花生を数点見ただけでびっくりしてしまいました。そして、こういった素晴らしいものが沢山あってそれぞれが異彩を放っていることに気が付き、嬉しくなってしまいました。まさに至福の時でした。
 何にびっくりしたかという点について述べたいと思います。
●先ず、花生が大きく堂々としています。寸法は高さ28cm以上あります。現代作家の一般的な花入れの高さ23cm程度に比べるとかなり大きいのです。
●次に、青緑色のビードロが深くてとても美しいことが挙げられます。会場では個々の花生に下方から昼色のスポットライトを照明していてこれが効果を生んでいるのかもしれません。特に、図録(2) 伊賀胴締花生は青緑色のビードロと灰色の焦げが混じっていて何とも言えない雰囲気です。図録では「苔むした岩のような風情」と表現されています。また、この花生の捻りかえした口縁はとても大きくて目立ちます。
●さらに、大胆な歪と奇抜な造形が挙げられます。以下、特徴のあるものについて詳細を述べます。
-- 図録(13) 伊賀擂座花生は胴部の歪が大きくてかなり傾いています。そして、末広がりの口縁の厚手なこと。堂々として好きな花生です。図録(14)も擂座花生ですが、こちらは胴部に大きな窪みがあってまるで殴ったかのようです。そしてビードロの美しいこと。しかし、残念なことに購入した図録を観てもこういったことがよくわからないのです。やはり、平面の写真では限界があるということでしょうか。
-- 図録(21) 伊賀耳付花生は正面左側の縦に長い突出部が大胆に造られていてまるで本のようですが、図録では微妙にわかりません。
-- 図録(22) 伊賀耳付花生 銘華厳も正面に同様の幅1cmほどの突出部があります。これを華厳の滝に見立てているのですね。
-- 図録(10) 伊賀耳付花生 銘福の神は大好きな花生です。鍔状(Tuba)の大きな口縁と鎹(Kasugai)形の耳が特徴です。この口縁の上面は少し凹部になっていて独創的です。ビードロはなく、全体に灰色の焦げが鄙びた雰囲気で上下方向に長く鋭い削りが入っています。静と動を併せ持つ花生です。
 伊賀の水指について述べます。 水指も堂々としていてかなり大きいものが多いです。これらの寸法は高さ20cm、胴径、底径が20cmもあります。
-- 図録(36)の有名な伊賀耳付水指 銘破袋は、独立した展示で4面から観られるようになっており、背面や側面のすごいひび割れを見ることができます。
-- 図録(37) 伊賀耳付水指は下膨れ形状でビードロ釉の美しい水指で、過去に桃山陶の展示会でも観たことのあるお気に入りのものです。これらも実物はかなり大きいです。
 図録について
図録を購入しましたが、いくつか不満があります。 1つは本が小さく(25×18.5cm)花生や水指が実際の寸法よりかなり小さく印刷されていることです。持ち帰るのは大変ですが、大判の本で図録を造ってもらいたかったと思います。
次に写真が全般的に赤みを帯びて撮影されていることです。このため実際の色味とはかなり違っています。写真を撮影し、編集するときに色バランスを考慮して欲しいと思いますが、品物が手元にない状況では無理でしょうか。図録の表紙の写真(表は破袋、裏は伊賀耳付花生 銘聖)はよく撮れているだけに残念です。どのくらい違うのかを、館内に花を生けて展示していた伊賀耳付花生(8)を私が写真を撮って編集したものと、図録の写真とを下記に掲載しましたので比較してみてください。ずいぶん印象が違うと思いませんか?

さて、こんな調子で1点1点特徴をメモしながら集中してやきものを観ていたので、さすがに疲れました。 そこで、五島美術館の庭園を散策しました。多摩川が武蔵野台地を浸食してできた崖のなかに深い森があります。道は急なところもあってなかなかのウオーキングを楽しめました。私は運動靴を履いてきたので問題はありませんでした。革靴やハイヒールでは大変かもしれません。崖の上には「富士見亭」、「古経楼」を称する茶室があったのですが、残念ながら敷地内への立ち入りは禁止で写真は撮れませんでした。私が訪れた10月末は未だ紅葉には早く、ぜひ紅葉の時期に来たいと思いました。茶室からの紅葉と富士山はさぞかし素晴らしいでしょう。

唯一写真撮影が可能な伊賀耳付花生
唯一写真撮影が可能な伊賀耳付花生(8)
伊賀耳付花生(8)の色味
伊賀耳付花生(8) 高さ27cm
図録(8)の写真
図録(8)の写真
五島美術館の庭園の入り口
五島美術館の庭園の入り口
茶室 富士見亭の側面
茶室 富士見亭の側面

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