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 ねずみ志野 天青
点線画像

2021年10月の多治見での大窯焼成では志野茶碗を3碗焼きましたが、2椀の絵志野は全く緋色が出ず、まるでガス窯を使って酸化焼成したようなひどい出来でした。ただし、あらかじめ鉄(弁柄)を薄く化粧掛けして亀甲文を大胆に描き落として志野釉を釉掛けした鼠志野の1椀だけは偶然にも面白いものになりました(冒頭の写真中央)。今回の大窯の焼成は還元炎が弱く、鉄が漆黒にならなかったのがちょうどよい色合いになったと考えています。
私はもともと鼠志野が好きではありませんので、制作することは滅多にありません。 志野茶碗は、鉄分の少ない良質なもぐさ土をつかって、半地下式の大窯での還元炎焼成と窯の徐冷によって美しい緋色が得るのが真骨頂だと思っています。したがって、良質な土にわざわざ鉄を塗ることは邪道だと思っているからです。 もし、今回3碗すべてを絵志野にしていたら窯焼成は全滅してがっかりしたことでしょう。たまたま鼠志野を入れたのが功を奏したと思います。
 さて、この茶碗の銘を「天青」としました。雨過天晴(訓読 あめすぎててんはる)から取ったもので晴を青と書き替えました。 コロナウイルスの蔓延が2021年8月に最悪の状況になりました。都内では自宅療養と称して放置された感染者が医療をまったく受けられずに亡くなるケースが増加しました。その後、10月になって感染者は減りはじめ11月には都内での新規感染者は一桁まで減少しました。原因はわかっていません。
また、わが家では中学校の教諭をしていた長男が仕事のストレスによって精神的なダメージを受け、メンタルクリニックの医師の賢明な判断によって療養休暇を取ることができました。今後、少しづつ良くなって復帰し、充実した時間を過ごせることを願っています。
まさにこういった時期に焼成された茶碗で、近い将来に「天晴」を迎えられるようにという願いを込めました。晴ではなくて青としたのは、茶碗の内側がなんとも言えない美しい青白色をしていたからです。この鼠志野茶碗は最近の作品の中では最も気に入っています。
下記写真1の左の茶碗は、素焼き品に鉄を化粧掛けして亀甲文を描き落とした工程のものです。この後 志野釉を掛けて本焼成をします。本焼成によってイメージがだいぶ変わったと思いませんか? やきものはその時の窯の状態や炎によって思ってもみなかったものができあがることがあります。諦めずに続けていれば良いことがあります。

素焼き品
 素焼きに鉄を化粧掛け
鼠志野茶碗 天青
 鼠志野茶碗 銘 天青
鼠志野茶碗の高台
 高台の土

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