伊賀茶碗と美濃伊賀茶入
伊賀焼 砧花入とぐい呑み
早暁の富士

伊賀焼と美濃伊賀

2021年4月 作品追加

伊賀と言えば忍者の里ですね。 以前に伊賀焼の第一人者と言われた谷本光生氏のやきものをぜひ見たいと伊賀上野を電車で訪ねました。 たまたまJRの線路わきで見つけたのが、光生氏のご子息である谷本景氏の三田窯です。パリで絵画を学んだ谷本景氏のやきものは、伊賀焼ではあるが伝統的なものに縛られない独特な作風です。穴窯は思いのほか小さく、数は入らないのではと思いました。ここでは 青緑色に窯変した伝統的な姿の砧花入れを購入しました(上記写真2枚目の左)。
伊賀上野には素晴らしい城があります。伊賀上野城の急峻で美しいラインを持つ堀の石垣に心を奪われました。高い石垣の上には柵がなくて剝き出しで、落ちると死ぬのではないかと余計な心配をしたものです。また、松尾芭蕉の碑があったのですが、当時の私は ここが芭蕉の生誕地で29歳までこの地にいたことを知りませんでした。次回、訪れる機会があれば芭蕉の史跡巡りを加えたいと思います。
 さて、旅の目的は 伊賀焼の谷本光生氏を訪問することでした。 残念ながら光生氏はいらっしゃらなくて、奥さんが伊賀焼の茶陶について説明してくれました。青いビードロが流れ、オレンジ色の緋色と、茶碗正面下部には黒い焦げがあるのが、伊賀焼のお決まりとのことでした。 特に茶碗は、端整な姿に青緑のビードロの流れが正面にかかり、茶だまりにはビードロがたまってキラキラとまるで宝石のようです。ここに来て良かったと思いました。奥さんは これらの茶碗を薦めてくれたのですが、20万円もする茶碗は当時の私にはとても買えませんでした(今も!)。そこで、何とか手の届く ぐい呑みを購入しました(上記写真2枚目の右)。ぐい呑みは5つぐらいあって、各々自然釉の流れや色に違いがあって選ぶのに時間がかかりました。 奥さんによれば、高齢の光生氏は窯焚きやろくろ成型を自分で行うことはなくて、ほとんどお弟子さんが作っているとのことでした。「谷本光生作」と言っても本人は造っていないのです。少々、がっかりもしました。

桃山時代の伊賀焼
天正時代後期(1585年)から江戸初期(1608年)にかけて焼かれた伊賀焼の花入や水指は、桃山時代の茶陶の中でも白眉と言われています。一作一作がそれぞれ異なった意匠であり、焼き具合も徹底的で ビードロが鮮やかものから黒く焦げて寂びたものなど個性豊かです。「破格の造形美」と言えるでしょう。これらは量産品ではなくて、茶陶として一つづつ丁寧に造られたものだと思います。 一度、桃山時代の伊賀焼の名品を集めて展覧会を開催してもらいたいと思っています。 さて、現代はと言うと、谷本光生氏の後に続くような素晴らしい伊賀焼を造れる作家はいないと思いますが、どうですか?
美濃伊賀について
美濃伊賀は美濃の土、釉薬を使って伊賀焼の意匠を真似たものです。本質的に 自然釉の伊賀焼とは全く別物といっていいでしょう。 良質な伊賀の土には及びもしませんが、伊賀を目指して意匠や、長石釉や鉄釉を流し掛けをするなどの工夫をします。私は、一生懸命伊賀を目指している美濃伊賀のやきものが大好きです。

谷本光生作 伊賀ぐい呑み

谷本光生作 伊賀ぐい呑み 品番tko01

上記コラムの谷本光生氏の陶房を訪問したときに購入したものです。 光生氏の素晴らしい茶碗のミニチュアであると思います。

谷本景作 伊賀砧花入

谷本景作 伊賀砧花入れ 品番tan01

上記コラムのJR伊賀上野の線路わきにある谷本景氏の陶房を訪問したときに購入したものです。 引き出し焼成特有の青緑色のビードロがきれいです。
大輪のガーベラは卒業生が教諭の長男に贈ってくれたものです。

伊賀花入 谷本貴作

谷本貴作 伊賀花入 品番tan02

谷本貴氏は、谷本景氏の長男です。偶然にも谷本家3代の作品が揃いました。
この花入も伊賀の名品の写しです。姿、焼きともに私が持っている花入の中では最高峰です。鉄分の少ない良質の伊賀陶土は白く発色し、そこにビードロがかかって緑色に変化しています。下部は窯変によって焦げが出ています。変化のある口造りにビードロがかかり素晴らしいと思います。背面は白い胎土に薄い緋色が出ています。

伊賀花入

伊賀花入 古伊賀の写し 品番iga01

古伊賀の耳付き花生 銘 聖の写しです。「聖」は伊賀の中でも最も斬新な姿だと思います。この器形に聖という銘をつけるなんて楽しくなってきます。
さて、この作品の正面は、窯変によって茶色~こげ茶~深緑~黒へと変化し凄まじい焼き肌です。しかし、私はこの激しい面は好きではなくて、信楽焼と言えるようなおとなしい背面を少し正面からずらして花を生けることが多いです。不確かですが、昭和49年以前に杉本貞光氏が紫香庵の伊賀焼水月で作陶していた時期の作品かもしれません。

伊賀茶碗 佐伯健剛作

佐伯健剛作 伊賀茶碗 品番sae01

佐伯氏は信楽焼の作家ですが、この茶碗の姿、焼き肌から伊賀茶碗としました。私はこの「剛」の伊賀茶碗に出会って すっかり魅了されてしまいました。

瀧口喜兵爾作 伊賀花入

瀧口喜兵爾作 伊賀花入れ 品番tgk01

箱書は伊賀ですが、どちらかと言うと美濃伊賀です。
日本陶磁全集の伊賀を見ていたら、桃山時代のものにこのように正弦波のような箆目(へらめ)を入れたものがありました。
全体に渋い色の花入れですが、このように花を入れると引き立ちます。 また、この耳は堂々としていて感心してしまいます。

守谷宏一作 美濃伊賀茶入れ

守谷宏一作 美濃伊賀茶入れ 品番mor05

守谷宏一氏の茶入れです。渋いながらも焼きの変化に富んでいて楽しめます。

守谷宏一作 美濃伊賀茶碗

守谷宏一作 美濃伊賀茶碗

珍しい美濃伊賀の茶碗です。 守谷宏一氏の陶房を訪ねた際に展示室に飾ってあったものを購入しました。
意匠など素晴らしいと思ったのですが、一服したときに自分には合っていないと感じました。 やはり、志野や瀬戸黒茶碗と比較してしまうと見劣りしてしまうのですかね?

加藤芳右衛門作 美濃伊賀花入

加藤芳右衛門作 美濃伊賀花入れ 品番kyo01

美濃唐津の名品としては、元屋敷窯跡で出土した美濃唐津花入れ(土岐市美濃陶磁歴史館所蔵)があります。 ひょろっと背の高い花入れには のびのびとした松の木が描かれています。
この芳右衛門作の花入れを初めて見たときには、上記桃山陶の花入れに雰囲気が似ていると思いました。少々大袈裟かもしれませんが---

鈴木豊作 美濃伊賀花入

鈴木豊作 美濃伊賀花入れ 品番suy01

多治見の美濃焼園にて購入しました。 最近気が付いたのですが、古伊賀の名品「寿老人」(藤田美術館蔵)の形を手本にしています。 姿、焼きともに素晴らしいと思います。 裏側の下部に窯割れがありますが、水は漏りません。

川本了生作 美濃伊賀花入

川本了生作 美濃伊賀花入れ 品番kak01

斬新な意匠の美濃伊賀は大好きで いくつか持っていますが、その中でも伝統的でバランスの取れたものです。 タタキ板の文様もなかなかのものです。
現代の伊賀の花入れはなかなか魅力的なものがないので、もっぱら美濃伊賀を購入してしまいます。

守谷宏一作 美濃伊賀花入

守谷宏一作 美濃伊賀花入れ 品番mor03

守谷宏一氏の陶房を訪ねた際に 桃の花を入れて玄関に飾ってあった花入れです。春の訪れを静かに待っているようでした。
不思議な姿をしていますね。正面下部が大きく割れていますが、水は漏りません(自然釉で水漏れは止まっています)。守谷氏によれば、この花入れは3回も窯焼きを行ったそうです。

山崎道正作 美濃伊賀花入

山崎道正作 美濃伊賀花入れ

この美濃伊賀花入れ(写真1の左)は、堂々とした本格的な造りです。桃山時代の花入れを彷彿とさせます。 あろうことか、手放してしまいました。今思うと 残念でなりません。