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 信楽に会ったが100年目
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私のやきものの原点は、辻清明氏の「明る寂」の信楽茶碗にあります。
清明氏が愛したような信楽茶碗を持ちたいと思い、これでもか これでもかと探しましたが、 頭の中の夢想する茶碗と現実とは大きな開きがあって 無い物ねだりを数十年にわたって延々と繰りかえしました。 個展などで信楽作家の茶碗を購入しては、「これは違う」と言ってすぐに手放す始末です。
 しかし、最近、ある作家の壮年期の信楽茶碗を手に入れました(上記写真の右端の茶碗)。 「明る寂」の茶碗ではなく 全体的に暗めですが、部分的にかかった自然釉に日光が当たるとビードロがとてもきれいです。 また、口縁が痩せた稜線のようにごつごつしており どうかと思ったのですが、使ってみると自然釉が適度にかかっていて唇の感触も良いのです。 粗削りの小さめの高台もなかなかのものです。
無い物ねだりの呪縛から解き放された気がしました。まさに、清明氏の言葉「信楽に会ったが100年目」になったのです。
 そうそう、辻清明氏の茶碗ですが、茨城県陶芸美術館に寄贈されているようです。 最近は清明氏の優れた作品を見る機会もないので、ぜひとも回顧展か、信楽の展覧会を企画してほしいと思っています。
写真左より、古谷和也氏の信楽茶碗、杉本祐作の信楽ぐい呑み、谷本光生作の伊賀ぐい呑みです。 これらは手放すことはなく、残っています。

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