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 日本画家 後藤純男の展覧会
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日曜美術館(NHK)で後藤純男の展覧会を知り、令和2年1月に千葉県立美術館に行ってきました。後藤氏が他界して3年が過ぎての郷里での展覧会で、近隣の流山市、野田市が後援しています。65歳以上が入場無料とあって、爺さん婆さん(私もじじいだが)が殺到して会場は大変混んでいました。私はゆったりと絵を鑑賞したいので、入場無料というのも考えものだと思います。また、図録(2500円もする)が売り切れで、増版後に郵送してもらいました。
 初期の頃の作品を除くと大作が多いです。しかも絵がやたらに大きく見えます。大好きな平山郁夫氏の絵も大作ですが、絵はそれほはど大きく見えません。これは、絵具を何層も重ねて輪郭がかなり曖昧になっているために絵から離れて見ざるを得ないためだと思います。一方、後藤氏の作品は輪郭が割としっかりしているため、近づいて観ることも多いのです。例えば、滝の絵では、滝の水しぶきの白がどのように描かれているのかを近づいて観たくなります。桜の絵でも同様です。
 以下、作品の中で気が付いた点を述べます。
蓮を描いた風景(No.6)が院展に初入選して仏道から日本画を志したとのことですが、私はこののっぺりした作品をあまり好きになれません。
懸崖(No.10)は岩の間を豪快に落ちる滝の水しぶきが素晴らしいと思います。その白色は惚れ惚れする色です。何を使っているのでしょうか?
「大和古寺から中国へ」の作品では、中国の仏塔と雷を描いた雷鳴(No.20)や、横長(3.6m)の構図で金色の紫禁城を描いた旭光紫禁城(No.22)に、中国の悠久の歴史と壮大なスケールを感じました。後藤氏の絵は、柔らかな日本の古寺よりも かっちりとした中国の建物の方が合っているように思いますが、私だけでしょうか?
新雪嵐山(No.25)は、真っ直ぐに伸びる渡月橋が素晴らしく、作者の臨場感と感動が伝わるような作品です。私もこのような橋の絵をいつか志野に描いてみたいと思いました。
三千院の冬を描いた雪(No.32)は、画面の切り取り方が絶妙であり、建物の絵も参考になります。
吉野山(No.41)は、桜を観ている自分がその場に居るような感覚になりました。
那智(No.29)の滝は 写真でよく見る構図ですが、まるでエンジェルフォールのような壮大さに加えて荘厳さを醸し出します。
「晩年ー四季の情趣」の作品は、どれも構成が硬過ぎてあまり好きになれません。私は、柔らかな絵の調子の方が好きです。

 さて、後日郵送してもらった図録がとても良いのです。特に、学芸員の「後藤純男の画業」の解説は、後藤氏の一生に照らして 各作品に対する後藤氏の行動や思いを紹介しており、たいへん興味深いものです。値段の高い図録ですが、購入して良かったと思います。
 最後に 図録から後藤氏の制作感を挙げておきます。もの造りの参考になるのではないでしょうか?
●「風景を描くときには、360度範囲を見回して、その空間の中に長時間立たなければ、その風景の心を捉えることはできない。」
●感動の表現--「ある風景に向かい、時間とともに変化する様子を心の中に積み上げていく過程で、感動する場面が何度かある。それらを自分なりに一つに要約する。 自然に感動があって絵にしようと思うときに、意識過剰になると、結果として良くないものになってしまう。俳句でも小説でも同じと思うが、ストレートに感情をむき出しにしてするとどうもいけない。」
 「時間的に無駄なようでも、狙い定めたところをスケッチしたら、さっさと帰ってくる。次に問題があったら新たに出直せば良い。」
●写真について--「写真を使ったら絵は描けないものですよ。私は写真に頼ったら絵は描けないと思っています。」

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