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 愛らしい香合
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写真左は守谷宏一氏の鼠志野の香合です。 薄い鼠色に梅の文が描き落としで描かれていて、とても可愛らしい香合でしかも丁寧に造られています。 私が香合を購入したのはこれが初めてです。香合が欲しかったというよりも、守谷さんの作品を探していたらたまたま香合に出会ったと言うべきでしょうか。 守谷さんの作品は、多治見の美濃焼園の御主人を通じていろいろ集めていたのですが、数年前にそのコレクションを処分してしまいました。最近になって処分したことを後悔してまた少しづつですが集めています。
さて、守谷さんの香合の使い道ですが、私は香を聞くことはしませんし、茶席で使うこともありません。購入してからその使い道を考えています。現在は、友人からもらったハワイのKona CoffeeのArabica Typicaという豆と、文房具の付箋を入れて机の上に置いてあります(下記写真の2つめ)。付箋が必要なときに蓋を開けてその微妙な香りを楽しんでいます。また、コロナ下ということもあり、時々、蓋を開けては鼻が利くかどうかをチェックしていました。
 写真右のオレンジ色の志野香合も守谷宏一氏の作です。最近、母の大切な形見を入れる容器を探していたら、この香合がオークションに出品されていて購入しました。入れるものが先に決まっていて、それに合わせて器を選択した珍しいケースです。 筒型をしたシンプルな形状で直径6cmと小ぶりですが、高さは4.3cmで深さがあるので、厚みのある小物を入れるには十分です(下記写真3)。薄く施釉された志野釉には沢山のピンホールがあり、全体にオレンジ色の焦げた緋色が出ています。上蓋上面にはさりげなく鉄絵が描かれていて、なかなか良い雰囲気です。こちらの香合も丁寧に造られています。

香合とは、茶会で炭に乗せる前の香木などを入れる容器を言います。これを機に香合について調べてみると、香合についてまとめられた文献は少なく、唯一「日本陶磁全集15 志野 中央公論社 1975年発行」の概説「桃山陶芸の息吹き」にあったので、ここで一部を抜粋し紹介したいと思います。
「香合 --- 茶陶の花生は備前や伊賀の独壇場であったが、香合は美濃のやきものの独り舞台である。やはり、釉が掛かり、絵文様もつけられる明るい質感の美濃のやきものが、黒い炭を扱う炭手前の中で用いる香合に適していたからで、茶人は備前や伊賀・信楽の香合は目にたたず沈んでしまうのでほとんど作らせていない。志野には優れた香合が多く、中でも江戸時代以来 一文字形と呼ばれる円形の平らな香合は声価が高い。 一文字の香合はすっきりとして美しいが、ほかにも桃山らしい自由さとおどけた面白味を強調した香合がかなり作られている。形と絵と質感がよく調和していて、それぞれに趣があってまことに楽しい。茶室で使って楽しむことを知っていなければ、このような小さな器に、さまざまな創意をこらすことはできものではなく、茶人だけではなく陶工たちにも風流する心があったことがしのばれる。」
本や図録で桃山時代から江戸時代の香合に着目すると、確かに志野、ねずみ志野、織部、黄瀬戸のすべてにおいて香合が造られていますね。姿かたちが可愛らしく、文様も工夫がなされているものが多く、小さな器を丁寧に造っていることがわかります。
茶陶の中で香合の値段は茶碗や花入れに比べて手頃であることから、今後 香合を楽しめそうです。果たして、現代作家のもので桃山時代の陶工のような風流を感じられる作品に出会えるであろうか? 観ていきたいと思っています。

鼠志野香合 守谷宏一
 鼠志野香合 守谷宏一
コーヒー豆と付箋を入れる
 コーヒー豆と付箋を入れる
志野香合 守谷宏一
 志野香合 守谷宏一

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