スカーレット 神山清子さん

令和元年の9月から令和2年の3月にかけてNHKで放送された朝ドラの「スカーレット」はとても興味深いものでした。信楽の陶芸家 神山清子(こうやまきよこ)さんがモデルです。神山さんの作品が、TV画面の背景に写るたびにカメラをTVモニターに向けて写真をパチパチ撮ったほどです。
私がやきもの造りを始めた頃、妻と信楽を探訪し 神山清子さんの陶房を訪ねたことがあります。
息子さんを白血病で亡くされた神山さんは少々うつ状態でしたが、穴窯を見せてもらったり、2週間をかける窯たきの様子をうかがっているうちに次第に明るくなって、お弟子さんは「こんなに明るい先生を見るのは久しぶり」とおっしゃっていました。たぶん、私があまりに一生懸命にやきものについて聞くものですから、神山さんは夢中になって説明してくれたのだと思います。瀬戸の陶芸家 加藤唐九郎もこの陶房に来たことがあるそうです。このとき、唐九郎は神山さんの信楽の壺に顔を擦り寄せていたと言っていました。
展示室には所狭しと1mを超えるような大壺や花入れが置いてあって、板敷きの床を歩くとみしみしと音がして大壺が揺れだすのでそっと歩いたことを覚えています。このとき 神山さんからいただいた たち吉での個展の図録をときどき見て楽しんでいます。
この図録(上記写真)は、平成5年5月に京都、東京のたち吉で開催された「神山清子展」のものです。
巻頭言で神山さんは述べてします。前年の4月に息子さんを白血病で亡くしており、その後 新しい窯を築いて1月にじっくり焚き上げた。緑のビードロ、青、焼焦げた窯変、そして輝きを放つ自然ラスターは再出発の作品であると。
私はこれらの作品を直接見てはいませんが、図録の写真からその迫力がひしひしと伝わってきます。だから、TV画面に神山さんの作品が映るたびに興奮して喜んでいたのです。


