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なでてさすって備前 中村真
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古い話になりますが、2005年に渋谷黒田陶苑にて中村父子展(六郎ののこした仕事)が開催されました。このときの図録を今でも大切に保管しています。備前の中村六郎の遺作展でもあったのですが、この図録に載っている六郎氏の緋襷茶碗が素晴らしくて無理をしても購入するべきだったと今でも後悔しています。 数年後、六郎の子息 中村真の個展に行って備前花入れを購入しました(下記写真参照)。中村真の作品を観ますと確かに父 六郎氏の技を引き継いでいます。特に、「酒器の六さん」と呼ばれた六郎氏のたおやかなぐい呑みや、ふっくらしてひょうげている徳利の技は真氏の作品にも見ることができます。 その後、私は中村真の備前筒茶碗を入手したのですが、その直後に父親を亡くし縁起が悪いと思ったのか、すぐに手放してしまいました。
 最近、オークションで中村真の筒茶碗を購入しました(冒頭の写真右)。口縁の捻り、少しカサついた焼肌に青いかせゴマが掛かっていて牡丹餅の茶褐色が景色を与えます。この地味で渋いかせゴマはメロンの肌に似ていることから「メロン肌」とも言うそうです。 外見はややおとなしくておおらかな印象を与えます。 口縁はそうとう波打っていてひねていると言いましょうか。私はこの捻りが好きではないのですが、作家の個性になっているのも事実です。遠くから見てもすぐに中村真の作品だとわかりますね。
茶碗の内側を観ると豪快で大胆なろくろ目が素晴らしいです。どうだを言わんばかりにろくろを引いているのがわかります。なかなか写真では伝わりにくい造形であって、手で触ってみるとその大胆さがよくわかります。これは熟練のなせる技ではないでしょうか。また、腰の部分が外側に出ていてます。内側の見込みを見るとろくろで外側に力強く膨らませていることがわかります。
高台はおちょぼ口のように少しだけ削っていて、「こんなものでどうでしょうか」と投げかけてきます。ウィットに富んでいますね。 もちろん欠点もあります。例えば、見込みに釉薬が掛かっておらず胎土が出ているので茶筅が擦れてしまいます。
この茶碗を手に取って撫でてさすっていると自分はやはり備前の土と焼きものが好きなのだと実感します。そして、この茶碗で一服したくなります。

中村真の花入と中村父子展の図録
 中村真の花入と中村父子展の図録
中村真 備前茶碗のメロン肌
 中村真 備前茶碗のメロン肌
備前茶碗 背面の景色
 備前茶碗 背面の景色
口縁のうねりとろくろ目
 口縁のうねりと内側のろくろ目
備前茶碗の高台
 備前茶碗の高台

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