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 使い込んだ味わいと汚れ
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やきものは使いこむほどに味わいが出て愛着がわきますが、単なる汚れ(汚らしさ)と勘違いしていることが多いようです。
 数年前、茨城県陶芸美術館にて桃山陶磁の優れた展示会があり、ミュージアムショップに人間国宝 加藤孝造氏の素晴らしい志野茶碗が置いてありました。 頼んで手に取らせてもらうとなかなか良くて、すっかり欲しくなってしまいました。と言っても私にとっては大変な値段です。 帰宅後も頭から離れず、清水の舞台から飛び降りる気持ちで貯金を下ろし、次の日にまた美術館に向かいました。 購入するつもりで茶碗を取ると、見込みには茶色の貫入が入り、高台の土はシミで汚れていました。昨日、美術館でのお茶会で使ったようです。 私は、一度の茶会でこのように汚れてしまうことにびっくりしましたし、もちろん、新品を購入するつもりでいましたので、 この汚れた茶碗を購入することを取りやめました。
 貫入の入りやすさは、土、釉薬、そして焼成によって異なるようです。ちなみに私が制作しました志野茶碗は、数回程度の使用では貫入はほどんど目立ちません。 高台の土にシミが出てしまうというのは、茶会でよっぽどひどい扱いをされたのだと思います。 また、志野(織部、瀬戸黒、黄瀬戸も)の土は白色のために汚れやすく、使用上の注意が必要だと思います。 汚れ方は、抹茶、煎茶、お酒などの種類によって違ってきます。あまり神経質にならず、経験を積んでいくしかありません。
 汚しては困るという理由で使わないでしまっておく方が多いのですが、やきものは使ってみないとわからない部分が多く、 やきものの愉しみをスポイルしていると思います。特に、茶碗は、自分に合っているかどうかを判断するために必ず使ってみることをお勧めします。 やきもの造りを志す者には、使うことによって得るものが多いと思います。
 写真は、自作の紅志野茶碗、瀬戸黒茶碗(北大路泰嗣作)と斑唐津めし椀(浜本洋好作)で、ともに20年以上愛用しています。 紅志野茶碗は妻が頻繁に使っていますが、貫入はほとんど見えません。瀬戸黒茶碗の高台の土は、古色を帯びて良い雰囲気です。 斑唐津のめし椀は長男がほぼ毎日つかっており、貫入がきれいに出ています。 このように大切に使われた味わいと、上述しました「汚らしさ」とは明らかに違うと思います。

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