古典と白河の関
すばらしい本との出会いほど嬉しいことはなく、人生を豊かにしてくれます。
プレバトというTV番組で俳句の面白さを知ったことに加えて、県立図書館から借りた「奥の細道 絵で読む古典シリーズ」富士正晴現代訳は、美しい写真と図録が載っていて解説はやや難しいものの楽しめました。奥の細道を読むのは、高校生のときの古典の授業でさわりを読んで以来です。旅と俳句がこんなにも素晴らしいものかと感動し、インターネットで上記の古本を購入して読み返しました。
奥の細道の何が難しいかと言うと、*歌枕(UtaMakura)や芭蕉が私淑する西行の歌が俳句や文章を理解する上でベースになっていることです。また、私が好きな歴史小説家 葉室麟の作品にもメインテーマとして西行の歌が引用されているものがいくつかあります。
そこで、図書館から「西行・山家集」井上靖著を借りて読んでみました。井上靖氏が、西行の生涯と歌をわかりやすく解説をしています。この本も図録や美しい写真がたくさん掲載されていて魅力的です。例えば、平山郁夫、東山魁夷、川合玉堂、菱田春草や円山応挙の絵が載っています。西行は、陸奥に2度 旅をしています。2度目は最初の旅から40年後で西行69歳のときです。西行の歌に少しでも馴染んでいれば、奥の細道の理解がより深まると思っていますし、次回読むのが楽しみです。
西行が白河の関で読んだ歌があります。
しらかわの関屋を月のもるかげは
人の心をとむるなりけり 西行
2021年6月に 西行も松尾芭蕉も通ったという白河の関に行ってみました。水田とまばらな丘陵の間を走っていくと、森に囲まれた一画があります。うっそうとした森には古木、大木がにょきょにょき立っています。大木の表面や石段は苔むしていて、冷気がとどまっていて神聖な雰囲気です。朝 9時頃に着いたのですが、森の中はやたらと暗く、白河の社に向かう石段にはまだ灯籠が点灯していました。「古関蹟碑 (Kokansekihi)」、平安時代の和歌3首の碑や、「矢立の松」、「十二位の杉」といった由緒のある古木があって歴史を感じる場所でした。また、白河神社の回りにはなぜか 空堀があったのですが、どういった目的で造られたのでしょうか? 直江兼続が家康の会津征討に対抗するための前線基地として造ったのでは?などと創造を膨らませてしまいます。
この森は 周りの田園地帯とは明らかに異なる空間です。以前に「織部と志野の文様」で説明しましたようなこと、つまり この地には結界が張られ、神霊の依代(よりしろ) すなわち、神霊が降臨しているかのように私は感じました。
古来旅人は白河の関から陸奥に入りました。将来、長男が少し余裕を持てるようになったら、二人で奥の細道を辿る旅をしたいと思っています。その前に、コロナウイルスが終息して、安心して旅に出られるようになるのが必要です。
*歌枕(UtaMakura) 古くの和歌の題材とされた日本の名所旧跡のことを指す。