志野の花入れ

志野の花入れ

2022年9月投稿

志野の花入れには桃山陶にも名品と言われるものがないと思います。
かつて一度だけ「これはすごい」と思ったものがありました。それは、25年ほど前に土岐市郷土歴史館で見た小ぶりの花入れでその素晴らしさに全く陶酔していまい、手に取って一瞬、盗もうかと魔が差したほどです。今後、再び訪問する機会があったらぜひ見てみたいものです。
現代陶器も同様で志野や萩焼の花入れに良いと思うものが無くて長年ず~と探していました。 最近、「これは」と思えるものを入手しましたのでここで紹介したいと思います。
冒頭の写真は左から 堀一郎 志野花入れ、加藤健 志野耳付き花入れ、加藤健 志野壺花入れです。

 堀一郎 志野花入れ
堂々とした姿形が良いですね。 何と言っても志野釉、緋色、土味に堀一郎という作家のアイデンティティがほとばしっています。 志野釉の調子は志野作家の中でも独特です。どっぷりと厚くかけられた釉薬はのっぺりした質感で、色はピュアな白色です。 そして釉薬が意識的に薄くかけられた下半部にピンクがかった緋色が出ています。 さらに花入れの下端には釉薬をかけず、土味を出しています。 一目で堀一郎のものだとわかるところが良いですね。
また、花入れの口縁は、私が大好きな矢筈口(Yahazu kuchi)になっているのもポイントです。 伝統を取り入れて、さらに自分の個性を発揮している花入れではないでしょうか? 私はこういった作品に魅かれるのです。

堀一郎 志野ぐい呑みと花入れ

花入れの高さは25.5cmです。外径は耳のある部分で14cmです。

堀一郎 作品の特徴

写真1は 口造りの部分です。志野釉薬の調子と矢筈口の形状がわかりますね。
写真2は花入れ下部で、独特な緋色と褐色の土味を楽しめます。

 加藤健 志野耳付き花入れ
冒頭の写真中央は、加藤健の志野花入れです。オークションで木箱代にもならない価格で出品されていて他に入札者はなく購入することができました。その姿形は桃山陶の伊賀花入れを模したものでしょうか?とてもバランスが良いですね。長方形に角ばった耳が個性的です。一般的に花入れの耳は柔らかな雰囲気のものが多いのですが---。
釉薬の調子は良く溶けていて透明で 緋色も抑えられてなかなか良いと思います。
絵付けは、花入れの下部に少しだけあって控えめです。私は経験から、志野や唐津の花入れで絵付けが大きく描かれているものに実際に花を入れると花が絵に負けて活かされないことを学びました。したがって、花入れを選ぶ際には絵が大きすぎず控えめなものを選ぶようにしています。
この花入れのように口造りが少し閉じてすぼまっているいるのが好きです。私も花入れを造ることがあるのでわかるのですが、この閉じた口造りは技術を要します。例えば、素朴な信楽の花入れの口造りはストレートのものが多く、技巧的な伊賀焼のものはほとんど閉じてすぼまっています。

加藤健 バランスの良い志野花入れ

花入れの高さは22cmですが、堀一郎のものと比べるとやけに小さく見えます。耳を含めた外径は14cmです。

本作品の特徴

写真1は 耳の部分です。角張っているところが珍しいですね。加藤健の志野釉はよく溶けて透明で貫入が入っています。 写真2は 口造りです。 写真3は 下部の部分です。右半分は透明な志野釉で、左半分は朱色の緋色がきれいです。

 加藤健 志野壺花入れ
この花入れは、焼きもの造りを始めた頃に多治見の美濃焼園で購入したものです。
この志野釉の調子はカチッとしていて大胆な釉垂れとカイラギが出ています。同じ作家ですが、上記耳付き花入れとは明らかに違います。この作品はガス窯の焼成ではないでしょうか?

可愛らしい口

高さ23cm、外径13.5cmです。
口はすぼまっていて愛嬌があります(写真2)。 写真3は背面の様子で、一部に焦げと緋色が出ています。 残念ながらこの花入れをほとんど使ったことがありません。

 美濃焼窯元の志野花入れ
土岐市肥田町の窯元 秀山窯の花入れです。 古いもので、初めてのオークションで購入したものです。ガス窯による焼成ですが、とても良い作品だと思っています。 志野釉は縮れて変化に富んでいて、柔らかな緋色も出ています。経験上、ガス窯でこういった変化を出すのは技術がいると思います。

ユニークな姿かたち

花入れとして少しバランスが悪いのがかえって面白いですね。何を手本にしたのでしょうか? 寺の本堂や仏壇にこのような形の花入れ(陶器とは限らない)があるかもしれません。この姿のルーツを探ってみるのも面白いかもしれません。何か情報があったら、是非 教えてください。
高さ 21.5cm、底の径 12cm。

口造りと変化にとんだ志野釉

写真1は 上から見た口の部分です。口部は平らで広がっています。不思議な造形です。
写真2は 肩の部分で志野釉が縮れて沢山のピンホールが出ています。