備前花入れ
 
備前焼の器
備前花入れ

土と炎の芸術 備前焼

 

土と炎の芸術と言われる備前焼が大好きです。
備前の土の入手が難しいことや長時間を要する独特な窯焚きから、自分で造ることはなく、もっぱら個人作家のものを購入したり、備前焼の展覧会を観て楽しんでいます。
特に、伝統的な花入れが素晴らしいと思います。バランスの取れた美しい姿、個性的な耳、そして内側に折り返した「姥口風」と言われる口造り。見ているだけでうれしくなります。上記3枚目の写真は、お気に入りの花入れを並べたものです。作家によってずいぶん雰囲気が異なりますね。書で言えば、左から行書、楷書、草書といったところでしょうか?皆さんは どの花入れが好みですか?
本ページの前半では備前焼の説明をし、後半では私の備前焼コレクションを紹介します。
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備前焼の特徴
備前焼は釉薬を用いず、土と窯焚きの炎によって褐色や紫、緋色に焼肌が変化し、ゴマが流れる変化に富んだやきものです。このように表情の豊かなやきものを造るには相当の手間とひまがかかります。
 以下、「土のぬくもり」藤原啓著から抜粋します。
「田んぼの底から土を掘りだしてから、轆轤(ろくろ)の上に乗せられるようになるまでにざっと4年。轆轤で形を整え、窯に詰めるまで3か月から半年。窯詰めに1週間を要し、窯焚きは2週間前後かけてじっくり焼き上げる。そして窯焚きと同じくらいの時間をかけて窯が自然に冷えるのを待って、作品を取り出す。」
 志野の大窯での窯焚きは通常3日間、冷ましに1週間ほどですから、備前焼の大変さがわかります。
備前の土づくり
また、藤原啓氏は著書の中で備前の土についても述べています。
「備前焼にとって、もっとも大切なのは土である。土の善し悪しがそのまま作品に反映するから、土は念入りに吟味する。ヒヨセと呼ばれる田の底の土は色が黒く、見るからに鉄分が多い。冬の間に掘り出し、1年から2年ぐらい風雨にさらしておく。十分に乾燥させたうえで細かく砕き、砂の全く混じらない土と、少々混じったものにふるい分ける。後者は壺や鉢ものに使う。
砕いた土は水槽に入れて、1週間置き、そのあと素焼きの鉢に入れて適度な硬さになるまで水分を抜く。これを足で踏んで良く練り合わせる。最近は機械を用いること多い。練り合わせた土はコンクリートのブロックぐらいの大きさにまとめ、さらに針金で5mm程度の厚さに薄く切り、指先でもむようにして小石や不純物を取り除く。こうしておいて日の当たらない地下室に1、2年寝かせるのである。
そのうちに菌類が繁殖して土にねばりが出てくる。「土をつくる」ということが実感としてわかっていただけると思う。」
 私も土づくりにこだわりがあって その地方のもぐさの原土を購入して自分で叩いて粘土を造っていますが、長期間にわたる備前の土づくりには敬服してしまいます。
備前焼の歴史
備前焼は平安から鎌倉時代の初期にかけて実用的で耐久性のある日常雑器が焼かれるようになりました。無釉焼き締めの素朴な肌合いは室町時代には茶道の流行によって茶人に愛され、桃山時代には茶陶の名品が数多く焼かれました。江戸時代以降、釉を掛けたやきものの台頭により一時停滞しましたが、戦後、金重陶陽、藤原啓、山本陶秀の3人の人間国宝が誕生し、現在に至っています。

私の備前探訪
1994年に妻と一緒に初めて備前を訪れました。前日は岡山市街の古びた旅館に泊り、早朝の赤穂線に50分ほど乗って伊部駅で降りました。途中にはかつて優れた日本刀が造られたという備前長船の地があります。  先ずは、駅前にある備前陶芸美術館で古備前や人間国宝の作品を鑑賞してから、地図をもらって町に出ました。町を歩くとウインドーに多くの作品が飾られ、各作家の陶房は自宅の一部を展示室にしていて、裏庭には登り窯があってレンガの煙突が見えます。陶片を埋め込んだ土塀もがあって、まさに陶郷の趣です。
 伊勢崎満氏の陶房は古民家風の藁ぶきの建物で、展示室に飾ってあった粗い土に緋だすきの美しい大壺と、おから色の土に長い緋だすきが特徴の大徳利が素晴らしと思いました。また、徳利の両肩にぽちっとと耳が付いているものがあって良いデザインだと思いました。満氏の奥さんが親切に説明してくれました。満氏の作品は高価であったため、長男 卓氏のらっきょ型の花入れを購入しました。ゴマの美しい作品です。
他にも山本雄一氏や後に人間国宝になる伊勢崎淳氏を回りましが、私の好みとは違っていました。伊勢崎淳氏の伝統的な水指は素晴らしいと思いましたが、デザインを重視したオブジェなどの造形作品は好きになれませんでした。
伊部からバスに乗って穂波の高台にある藤原啓記念館に行きました。素朴でゆったりとした作品を見て、記念に藤原啓の本「土のぬくもり」を購入しました。
 このときに伊部でもらったやきものマップの裏ページには備前焼作家名簿と陶印が載っていて今でもときどき活用しています。例えば、オークションで作家名が分からないという備前焼が出品されてもその写真の陶印から作家名を調べることができるのです。

備前焼コレクション

備前やきもの探訪

備前探訪の土産

初めての備前探訪で購入したものです。
急須と湯飲みは松井陶仙作です。最初に入ったのが松井陶仙氏の陶房でした。他の個人作家の家と比べると貧乏で、名前もちょっと胡散くさかったですね。ここでの楽しい会話を覚えています。作品は本格的でしっかりしていますが、今考えても急須の値段は高かった。
らっきょ型花入れは伊勢崎卓作です。

伊勢崎卓 備前花入

備前耳付き花入 伊勢崎卓 品番ise01

この花入は、伊勢崎卓氏が銀座黒田陶苑で個展を行ったときに購入したものです。誠実な人柄が作品によく表れていると思います。

藤原建 備前茶碗

備前茶碗 藤原建 品番fken01

藤原建は、藤原啓の甥であり、啓にとって初めての弟子になります。 藤原啓の著書「土のぬくもり」のなかで、建の人柄ややきものについて述べています。
窯焚きの名手と言われた建は、昭和45年に幅2.4m、長さ23mになる大窯を築いて窯焼きをしています。この作品の栞には昭和46年と記載されていますので、この茶碗は大窯での作品かもしれません。 この茶碗を手に入れたときに気が付いたことがあります。それは前の持ち主がとても大切にしていたということです。手に取ってみると焦げやゴマの表面がとてもスムースになっています。口縁の唇が触れる部分も同様です。

備前 すり鉢

備前すり鉢 藤見俊一 品番fuj01

2004年に茨城県陶芸美術館で開催された「備前焼の魅力 -伝統と創造- 」の展覧会は素晴らしいものでした。特に、古備前や桃山期の名品が集められ迫力があったし、現代陶の作品も秀作揃いで楽しめました。日にちをかえて2回見に行きました。
写真の片口は、この時に併設のショップで展示即売していたものです。有名な作家ではありませんが、褐色の土色やサン切りと変化に富んでいます。普段使いの器として重宝しています。この器が縁で3回目の備前探訪では藤見俊一氏の陶房を訪れました。

中村真 備前花入

備前耳付き花入 中村真 品番nak01

2005年に渋谷の黒田陶苑にて開催された「中村父子展 六郎の残した仕事」を見てファンになりました。この時に六郎氏の緋だすき茶碗を購入しておくべきだったと今でも後悔しています。 この花入れはその後の個展にて購入したものです。力の抜けた全体の姿、のたりのたりとした口造り、指跡の残るぶっとい耳といい、雰囲気が好きです。

川端文雄の花入

備前窯変花入 川端文雄 品番kaw01

上記中村真氏の花入とは対極にあると思います。無骨で堂々としているこの花入も大好きです。花を入れなくても、かざって豪快な雰囲気を楽しめます。 凹部にくぼんだ口造り(写真3)がなんとも言えませんね。焼き肌の変化も素晴らしいです。

高原邦彦 備前花入

備前耳付き花入 高原邦彦 品番tak01

最近購入しました。耳付き花入としてのバランス(全体の姿)は理想的だと思います。

備前大扁壺

備前大扁壺 柴岡守 品番sib01

大学での学会に参加した帰途、根津にある骨董屋で見つけました。 不思議なもので 私を呼んでるような気がして(まるでお宝探偵団?)、次の日に購入しました。
写真ではわかりにくいのですが、とてもボリューム(高さ28cm、幅が25cm)があります。

中村和樹 備前茶碗

備前茶碗 中村和樹 品番kaz02

中村真氏のご子息 和樹氏の茶碗です。のびのびとした雰囲気です。 私がこの茶碗を手に取ると手でこすりたくなります。また、写真でお見せできないのですが、見込みのねっとりとした褐色の土味(観音土)がなんとも言えません。

森陶山 大皿

備前大皿 森陶山 品番mor01

2回目の備前探訪のときに陶房のウインドーに飾ってあったのを見て購入しました。 直径33cmの大きさで、全体に黄色のゴマがかかっています。備前の器はしばらく水につけてから使うときれいです。
以前、家族で手巻き寿司を食べるときに刺身をこの皿に盛ったものです。 近所の魚屋さんが廃業してから手巻き寿司を楽しむことがなくなってしまいました。

備前長方皿

備前長方皿 藤見俊一 品番fuji02

藤見俊一氏の陶房を訪ねて直接購入したものです。 長さ40cm、幅22cmの大きさです。2つの大きな牡丹餅(ぼたもち)と激しい焦げがアクセントになっています。 飾ってあるだけで残念ながら使ったことがありません。

緋だすきの湯飲み

備前の緋だすきの湯飲み

ここで苦言を呈さなければなりません。
写真左の緋だすきの湯飲みはいわゆる有名作家のものですが、新品を使って2週間ほどで内側に黒いカビがはえてしまい使えません ほぼ同様に使っていたのが、写真右の沖縄 やむちんの湯飲みです。こちらの方は土が白く細やかなのでカビがはえやすいと思ったのですが、まったく問題ないのです。使い方はほぼ毎日ジュースや水を飲むなどコップがわりに使っていました。使ったら水で洗って逆さまにして水を切って置き、しばらくしてから湯飲みを仰向けにして乾かします。
 釉薬がついているか、いないの差だけではない気がします。私の推測ですが、この緋だすきの湯飲みはガス窯や電気窯で短時間で焼成したものではないでしょうか?長期間登り窯で焼成する本来の焼き締めとは明らかに異なっていて、水分が乾きにくいのではないかと思います。100円ショップの傘ではあるまいし、せっかく購入したのに実用に供さないというのは問題であると思います。私のようにお金を出して失敗しないようにぜひ気をつけてください。