自作の志野茶碗たち
多治見修道院
永保寺 無際橋

志野 4

2022年2月投稿

初めて大窯で志野を焼いてから30年近く経ちました。できるだけ毎年大窯焼成に参加してコツコツと造ってきました。焼成したもの全てがうまくいったのは2回ほどで、ほとんどは気に入ったものが1つ取れれば良しとすることが多かったようです。時には、焼成したものすべてがダメでがっかりした年もありました。こうしてお気に入りのものを手元に残して、2021年末に50碗になりました。
 大窯の焼成に参加するときには、素焼きして施釉した茶碗4個ほどを大きなバックに入れて始発の電車に乗って岐阜県多治見に向かいます。途中、電車の乗り換えや新幹線の車内ではやきものに衝撃がかからないように細心の注意を払いました。 多治見駅から安土桃山陶磁の里までは今では ききょうバス(オリベ観光ルート)があって直接行けるのですが、以前は直接行けるローカルバスがなくてできるだけ近くのバス停まで行ってそこから山道を30分以上バックを持って歩いたものです。こうして安土桃山陶磁の里の工房にやきものを搬入すると一段落です。緊張がゆるんであとはのんびり多治見の探訪を楽しみました。
 併設の美濃焼ミュージアムで企画展や桃山時代のやきものを見て楽しみます。そして、徒歩で虎渓大橋を渡って多治見修道院を経て虎渓山永保寺の庭園を巡ります。帰りに美濃焼園に立ち寄るのが恒例になりました。 美濃焼園の工芸館のテーブルには美濃焼の本や展覧会の図録が置かれ、ご主人とやきもの談議をします。2時間ほどお話することもありました。ご主人、奥様と息子さんが美濃焼を盛り上げているといった雰囲気があってとても好きでした。帰りの電車に間に合うようにと息子さんが駅まで自動車で送ってくれたことを思い出します。
50椀にはこうした思い出が詰まっています。本ページの後半ではできるだけ最近の作品を掲載します。

志野茶碗 里の絵

志野茶碗 里の絵 品番s2698

初期の作品で、特にこの形にこだわっていました。
表は私の実家の2階から見た里の絵を描きました。裏はランの花です。土はもぐさの上層土で高台の土味を堪能していただければと思います(写真3)。 緋色は出ていませんが、釉薬の縮れに変化があって面白いと思います。

志野一文字茶碗

志野一文字茶碗 品番s4100

緋色は出ていませんが、全体的にバランスが取れていると思います。 丸っこくて手取りの良い形、高台の土味も良いと思います。 絵付けは当時5歳の息子が描きました。我々と違って 子供は自由に筆を走らせることができます。 見込みには 焼成時に石の抜けた穴がありましたが、紅漆で補修しました(写真3)。

志野 橋の絵茶碗

志野 橋の絵茶碗 品番s4008

大振りで全体的に薄手です。大きく造れば迫力が出ると思い込んでいた頃の作品です。
焼きは 釉薬が溶けてカチッとしています。志野らしくないので、好き嫌いが分かれると思います。 口縁の内側の緋色がピンク色に発色してきれいです。また、高台は激しい炎の跡が残っていて見どころだと思います(写真3)。

志野茶碗 ザクロ

志野茶碗 山の端 品番s3514

穏やかな山の絵です。大きすぎず、手取りの良い茶碗で使いやすいと思います。
還元炎が強すぎて高台の土がこげ茶になっていますが、志野釉の調子はまずますです。

志野茶碗 ザクロ

志野茶碗 ザクロ 品番s4818

2018年に大窯で焼成した4椀の一つです。正面にザクロの実を描きました。私の実家の庭には古いザクロの木があって毎年実をつけます。釉調はところどころ空気が抜けたぷつぷつとした穴があります。あばたもえくぼで、私は志野釉のぷつぷつが好きなのです。この茶碗の器形や志野釉の釉調は、やきものを始めた頃のものを思い起こさせ懐かしさを感じます。

志野茶碗 蛍草

志野茶碗 蛍草 品番s4920

大好きな葉室麟の小説「蛍草」がNHKで放送されたのを機にこの絵を描きました。 裏には福島県の薬師堂を描きました。土は焼締まっていて底にはヒビが入っていますが、お茶は漏れません。

志野茶碗 どろろ

志野茶碗 どろろ 品番s5021

2009年の大窯焼成で大きく欠けて出た紅志野茶碗でしたが、2021年に欠けた部分のパーツを造り、呼び継ぎをして使えるようにしました。
大振りの茶碗ですが、全体に均一な厚みで手取りはかなり良いです。造りのこだわり「12年をかけた志野茶碗」で詳細を紹介しています。

志野茶碗 兎文

志野茶碗 うさぎ文 品番s5121

2021年5月に2椀を焼成しました。桜もぐさ土で造った茶碗で全体にきれいな桜色に発色しました。
この茶碗の絵付けは表、裏共によく描けていると思います。うさぎは唐津茶碗や志野向付に描かれていますが、志野茶碗では見たことがありません。 裏の山の端の絵は会心の出来です。

志野茶碗 千鳥と欄干

志野茶碗 千鳥と欄干 品番s5221

こちらの茶碗も桜もぐさ土で造ったものです。この土は粘りがなくてさくい土のなので少々手取りが重くなってしまいます。
表の絵は千鳥と欄干を、裏は伝統的な鷺と傘を描きました。

鼠志野茶碗 天青

鼠志野茶碗 天青 品番s5321

2021年10月の大窯焼成では還元炎が弱くて絵志野は全くダメでしたが、たまたま造ったこの鼠志野は程よい発色になりました。 この茶碗の銘は「雨過天晴」から取ったもので晴を青としました。