自然釉 礼賛
早暁の明るさのような 何かが始まりつつある静けさと美しさ。登山の時には 今日一日を約束してくれるような期待感があります。
ときに 無釉の焼き締めにかかる自然釉や 炎の軌跡である焼肌はそのようなものを想起させてくれます。
辻清明氏は これを信楽の「明る寂 (Akaru Sabi)」と呼んでいます。
ここでは 収集品の中から自然釉や焼肌が美しいと思うものを集めてみました。
と言っても実物が一番です。写真でどこまで迫れるでしょうか?
また、感応的である偶然の美を文章で説明したところで果たして伝わるものでしょうか?
ビードロ
厳密に自然釉かどうかはわかりません。
見込みに積もった木灰が深緑色にきれいに発色しています。
まるで万華鏡のようにキラキラ輝きます。
オレンジ色の奇跡
オレンジ色の緋色です。
写真のものは ぐい呑みのごく一部分のみ発色しています。
茶碗でこのような緋色が出ているものを長年探しましたが、なかなかお目にかかれません。
信楽の作家に頼んだこともありますが、やはり無い物ねだりでしょうか?
深い海の底
信楽茶碗の高台部の自然釉の窯変です。
緑色から乳濁の白、深緑から紺色へと変化しています。
炎が自然に積もった灰に色を付け 絵を描いています。
青と白の窯変
急冷されてこのようになったと思われます。
青いビードロと乳白色の白濁釉が混じりあっていて 何とも良い雰囲気だと思いませんか?
しかも茶碗の左半分のみこのようになっています。
どこまでが人為的なもので、どこまでが自然の炎による偶然によるものなのか?作家に聞いてみたいものです。
引き出し
こちらは引き出し焼成による伊賀の花入です。
信楽や伊賀では 焼成中に穴窯から引き出して急冷させることが行われます。
全体的に青緑色に窯変しますが、どちらかというと暗めで「冷え寂 (Hie Sabi)」と言えましょうか。
伊賀のお決まり
ビードロ、黒いこげ、そして明る寂の緋色が 伊賀茶陶のお決まりだそうです。 この話は 谷本光生氏の陶房でお聞きしました。
紫色の焼肌
神山清子氏の面取り花入れです。
なんと紫色!に発色しています。
表面は紫色、裏面は明る寂のオレンジ色です。
神山氏は2週間 窯を焚くそうです。
焼いて焼いて焼きまくって、まさに人事を尽くして天命を待ったのでしょうか?



