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造りたい黒織部
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造り手として今年はこれをやりたいというものがあります。ふとしたきっかけで黒織部茶碗を造りたくなります。昨年、インターネットオークションを観ていたら桃山時代のものと思われる黒織部茶碗が2碗出品されており、文様がいいなと思っていたらそのうちの1つは15万円で落札されました。
(1) その文様は「柴垣(Shibagaki)」です。下記に墨絵で描いたものを掲載しました。柴垣は古くからある垣根の1つで、なんと「源氏物語図屏風の若紫」の段では小柴垣から美しい幼女を垣間見する光源氏が描かれています。 柴垣の文様は志野織部の器(向付)に描かれたものが多く、黒織部茶碗に描かれたものを見たのは初めてです。
古来柴垣は他の垣根と同様に神の依代としての性格をもったことが、近年の民族学の研究で明らかにされているそうです。すなわち、農民の屋敷や垣内にめぐらすことによって一種の聖域としての不可侵権を持っており、境界として邪悪なものを祓う意味があったと解釈されています。このように柴垣を器に描くことでやはり邪気が入ることを祓おうとしたのではないかと言われています。 さらに、この茶碗の見込みにも窓(黒釉が覆っていない部分)があって、そこには「吊るし柿」が描かれています。どうしたら、見込みにこのような窓を造れるのだろうか? 頭で考えてもダメで実際に茶碗を造って黒釉を掛けてみるしかないと思いました。
(2) もう一つの黒織部茶碗は歪が大きく、正面に「鳴子(Naruko)」の文様が描かれていました。下記2枚目の墨絵を参照ください。鳴子も現代では見ることはできません。調べると「鳴子とは引板とも言い、板に竹管を連ねたもので引くと音を発する。田畑から鳥を追い払うための仕掛けで、その図柄は外から内に侵入する者を拒む、いわゆる結界や境界を象徴する。」とあります。 鳴子文も青織部の向付や志野向付に描かれることが多く黒織部茶碗で見るのは初めてです。自作の黒織部茶碗にこの文様を描いてみたいと思いました。
(3) さらに、造りたい黒織部茶碗があります。それは *「茶の湯の茶碗 第三巻 和物茶碗Ⅰ」の230頁に載っている桃山時代の沓型の茶碗の写しです。この茶碗は斬新な文様と全体の姿形の良さに惹かれました。解説によると「中央を三条の線で2分する。その右側には石畳紋、左側には長方形を囲んだ的状の2つの円を描く。文様を描くとき、口縁部と胴部の境が意識されている。~」とあります。また、この茶碗の高台脇には古田織部の花押が描かれています。堂々として見栄えがよく、ぜひ実物を見たいと思いました。
さて、うまくできるだろうか。

柴垣文の黒織部茶碗
(1) 柴垣文の黒織部茶碗
鳴子文の黒織部茶碗
(2) 鳴子文の黒織部茶碗
斬新な文様の沓形黒織部茶碗
(3) * 書籍 230頁と写し絵

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