△窓の黒織部(柴垣文)

昨年、インターネットオークションを見ていたら桃山時代のものと思われる黒織部茶碗が出品されており文様や意匠がいいなと思っていたら、15万円で落札されました。
今回、この桃山陶の写しを造ることにしました。
その文様は 柴垣(Shibagaki)です。古くからある垣根の1つで、なんと「源氏物語図屏風の若紫」の段では小柴垣から美しい幼女を垣間見する光源氏が描かれています。柴垣の文様は志野織部の向付に描かれたものが多く、黒織部茶碗に描かれたものを見たのは初めてです。古来、柴垣は他の垣根と同様に神の依代としての性格をもったことが近年の民族学の研究で明らかにされています。すなわち、農民の屋敷や垣内に柴垣をめぐらすことによって一種の聖域としての不可侵権を持たせ、境界として邪悪なものを祓う意味があったと解釈されています。このように柴垣を器に描くことはやはり邪気が入ることを祓おうとしたのではないかと言われています。
本茶碗の特徴は三角窓に柴垣文を描いていることです。実はこの三角窓がかなりの難物だったのです。
先ず、本歌の写真をもとに墨絵に描き(下記写真1)、それを意識してろくろ成形を行いました。
素焼きを終えて、いきなり瀬戸黒釉で三角窓が開くように施釉しようとしたら失敗してしまいました。
そこで、瀬戸黒釉を剥いで、素焼き品に鉛筆で三角窓の下書きを書いて、水をはった洗面器に素焼き品を傾けて入れて下書き線にそって水をつける練習をしました。
次に課題になったのが三角窓の形に合わせて透明釉を掛ける技法です。従来の流し掛けでは窓部に均一に施釉することはできません。同様に水をはった洗面器に素焼き品を傾けて入れて何度も何度も練習してこの技法を習得しました。どのようにしたか、種明かしをしませんのでぜひ考えてみてください。
こうして素焼き品に瀬戸黒釉で空いた三角窓をつくり、窓部に柴垣を描いて、さらに透明釉(土灰釉)を三角窓部に掛けてから本焼成をしました。
前回6月の黒織部焼成「Blog 久々の黒織部」では焼成温度がやや低かったので、今回は還元焼成で1200℃で引き出すことにしました。その他の焼成条件は前回と同様にしました。当日はやや気温が高かったせいか、1160℃以上でなかなか温度が上がりませんでした。そのせいか還元炎が強くかかりすぎたようです。
完成品を観ると、透明釉はきれいに溶けているのですが、融点の低い瀬戸黒釉が溶けすぎで 一見してのぺったした印象です。瀬戸黒釉のこのような焼肌は初めてです。目を凝らすと茶碗の側面に釉薬の流れや、鉄釉が結晶化している部分があります(下記写真参考)。
また、見込みの部分は漆黒でまるで硯の表面のようにスムースです。このため、抹茶の泡立ちがきめ細かくて美味しくなることに気が付きました。さらに、黒い茶碗にもかかわらず夏の茶碗としても使い勝手が良いことがわかりました。
このように苦労して造った茶碗は出来が悪くても愛しいものです。
将来、モチベーションがあるときに今回の焼成条件を踏まえてもう1トライするかもしれません。冒頭の写真にもあるように絵付けまで完了している素焼きの茶碗がもう1椀あります。






