コロナウイルスとオリンピック 
Corona Virus19 in Japan (6)
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5月26日、日本でのコロナウイルスによる累計死者数12,500人、昨日1日あたりの日本での死者数は105人である。毎日多くの方が亡くなっている。日本全体での現在の患者数62,300人、対策病床使用率(現在患者数 / 新型コロナ対策病床数)は 90.9%である。
 東京都は緊急事態宣言中であり、6月20日まで~再~延長する検討がなされている。
政府は4月25日から5月11日までの期間、東京、大阪、兵庫、京都を対象に緊急事態宣言を出した。さらに5月7日に、上記4都府県の緊急事態宣言を5月31日まで延長した。つまり、最初の2週間で収束する見通しが甘く、失敗している。そして、現在、~再~延長が検討されている。日本の緊急事態宣言の内容は、イギリスなどで行われた いわゆるロックダウンに比べるとかなり緩い施策である。このため コロナの収束を見通せる段階までなかなか到達できないとみている。
さらに、コロナウイルスの従来株やイギリス型に比べて感染力がきわめて強いと言われる「インド型」の流行拡大の懸念もある。日本の検査体制は未だに不備であって、インド型の実態把握は遅れている。

医療体制のひっ迫度をあらわしているものが「入院者数」「重症者数」と「病床使用率」である。ここに反映されておらず、重要と考えているのが「宿泊療養者」、「自宅療養者」と「入院・療養等調整中」である。特に、「自宅療養者」は、処方箋もなく、基本的に医療を受けられないに等しい状態に置かれる。保健所からの連絡だけでは不安である。また、同居家族がいる場合には家族に感染させてしまうリスクが極めて高くなる。自宅療養ではなくて「自宅待機」「自宅放置」という言葉が適切だと思う。東京都ではこの「自宅療養者数」は 1420人、さらに「入院・療養等調整中」は 676人もいる(2021年5月25日現在)。
コロナ対策に有効なワクチン接種についても日本は遅れており、接種率はかなり低い。菅総理は7月末までに65歳以上の高齢者(3,600万人)の接種を完了するとしているが、かりにこれを達成できて、さらに2月からワクチン接種を開始した医療従事者は480万人を含めても、日本の全人口の約32%である。しかも、経済活動の主体である65歳未満は、まだ未接種なのである。集団免疫の効果は期待できない。このような状況で7月23日にオリンピックがスタートする。

さて、世論調査によれば国民の70%以上が、年内のオリンピック、パラリンピックを中止、または延期すべきと考えている。私は、選手、スタッフ、コーチについては いわゆるバブル方式で一般の人々と完全に隔離して安全に運用できると思う。問題は、7.8万人と言われているマスメディアを含む海外からの大会関係者である。そもそも日本国民と隔離するために彼らの行動を抑制することは無理だと思う。何ら罰則もなく、自制を促すだけでルールを守れるのは日本人だけだと思った方が良い。さらに、大会の終了後に日本に留まる彼らの行動をどのように制限するのか? JOCは、これら海外からの大会関係者への対策をわかりやすく説明すべきである。
オリンピックを推進している菅総理と政府、東京都知事、JOC、オリンピック・パラリンピック担当大臣は、常に「安心、安全な大会」と言うが、スローガンだけでは説得力は全くなく、安心、安全への具体的な取り組みの説明は一切ない。そもそも誰が責任者であり、最終決定をするのだろうか?
責任者は、安心、安全への具体的な取り組みの説明をしっかり行い、国民の不信感を払拭する時だと思う。その際、プレゼンのきわめて下手な総理自らが説明する必要はなく、隣に立って説明の上手な部下に命じてやらせれば良いのである。その上で国民の信頼が得られないのであれば、勇気をもって中止の決断をすべきである。
今回のことで思い浮かぶのが、ヒマラヤなどへの遠征登山である。長い期間 情熱、労力、費用をかけ 周到な準備を経て、高峰へ向かうが、天候が悪化したり、雪崩や滑落などのアクシデントが起きたり、体調不良によって、登頂を断念することがある。むしろ、困難なクライミングほど成功する確率は低い。その際、勇気をもって決断し、登山を中止して生きて帰るのである。

幸いにして本HPを見てくださる海外の方も多い。今後も日本の現状を発信していきたいと思っている。