復刻したロシアの時計 OKEAH

ソ連時代に国営の時計工場で製作された手巻き式クロノグラフムーブメント(3133)が、2019年に発見され、シュトルマンスキーが限定復活したモデルです。1966年、このムーブメント 3133の開発がスタートし、オケアン(OKEAH)は海軍の士官向けとして軍に供給されたという歴史があります。
以前からテレメータ付きのクロノグラフが欲しかったのです。何に使うかというと、落雷した場所からの距離を計測します。この時計を購入して早速計測の機会が訪れました。雷がぴかっと光ると同時ストップウォッチを動作して、落雷の音が鳴ったらストップするのですが、実際はかなり難しいことがわかりました。そもそも雷がいつ光るのかを予想することはできないので、光と同時にスタートボタンを押すことはできません。ちなみに、落雷地点から500m離れている場合、光ってから落雷の音がするまでの時間は約2.6秒になります。それでもテレメータを使って楽しむことはできました。
この時計は2カウンターのクロノグラフですが、外周のインダイヤルの基準マークを時間針に合わせておけば、30分単位の目盛りによって、30分を超えたクロノグラフの計測が正確にできます。さすが海軍用の時計で視認性が極めて高いことがわかりました。下記写真に、クロノグラフの計測例を示しました。ぜひ経過時間を読んでみてください。私は他にも2カウンターのクロノグラフ(スイス製)をもっていますが、ほとんどのものはデザインを重視するあまり 30分を超える正確な計測ができません。また、この時計は上記外周のインダイヤルを含めてスーパールミノバが付いていて夜間の視認性が抜群です。
ダイヤルのデザインは素晴らしいと思います。特に、2つのインダイヤルを覆う濃紺の帯と、クロノグラフの赤い秒針やテレメータの赤い目盛りがとても鮮やかです。さらに、ややオーバル形状の時計本体や、ラグのデザインもユニークです。
機能については、クロノグラフのボタンを押したときのタッチはあまり良くありません。特に、スタート、ストップのボタンのタッチが曖昧で、意識的にきつく押さないとストップできないときがあります。後述しますが、機械の調整上の問題かと思っています。
また、パワーリザーブが半分以下のときにクロノグラフを動作させると、インダイヤルの針が繰り上がるときに時計が止まってしまうことがあります。この不具合は致命的で、その後は時計として機能しなくなってしまいます。こういったこと数回ありましたので、クロノグラフを使うときには、ネジを十分に巻くようにしています。
設計、製作が古い機械なので、こういったこともありかとあまり神経質にならず許容しています。将来、オーバーホールをするときにしっかり調整してもらおうと思っています。
この機械(ムーブメント 3133)ついては、船橋の時計店 三井堂の「時計修理にっき」(2021年4月11日付)にオーバーホールしたときのBlogがあったので文章を引用したいと思います。
「ロシアの---ヴィーナス188のコピームーブメントですね。構造はヴィーナスと変わりなくやる作業も変わらないので修理料金は少し割高になったしまいますが---。
意外とよく出来ていました。三番車のウケが独立してプレートが外せるようになっていたり、微妙な変更点はありました。カレンダーは早送りなし、バネつきのカレンダー送り車で数時間逆戻しすることで早送りができるタイプでした。一番芯受け穴は摩耗というよりも製造時にきっちり作っていなくてガタが出ているような感じだったので、全体的に回りから金属をたたいて寄せてガタをなくしました。」とあります。また、このBlogにはムーブメント全体とばらした部品の写真が載っています。
この時計を造っているシュトルマンスキーの工場については、正美堂時計(Syobido)のHP(2020年10月2日付)に、ロシアとの中継(YouTube)動画があってとても興味深いものでした。トータル2時間30分のビデオです。私は工房というか、物づくりをしている現場を見るのが大好きです。
ボルテックスグループは2000年にシュトルマンスキーの時計の生産を開始しました。社長が90年前に造られたという建物の内部を案内してくれます。先ずはデザインオフィースから、次にコロナの影響で人が少ないという製造現場に入ります。狭い部屋には、時計のケースを加工するマシニングセンター、スイス製の古い卓上旋盤、ボール盤、さらに最終工程で使うという研磨機がありました。
時計の工房では 4人の時計師が作業をしています。古いスイスの時計工房のような雰囲気です。
テスト工程では、美人の女性が時計を手で検品した後、タイムグラファーを使って精度確認をしていました。後半は、ショールームで新製品の紹介をしていました。
このビデオを見て、古き良き工場で手造りされたこの時計への愛着をさらに深めました。



