桜灰釉の作り方
1.灰のアクとり
燃えかすを除いて灰を集め、水の中に入れて「アク」を除きます。 毎日、灰泥の水を取り替えて(灰は底に沈殿するので上水を替える)、表面にぬめりがなくなるまで繰り返します。 大体、1週間以上行います。アク(アルカリ)があると施釉後の乾燥が遅く、縮れや気泡など不良原因になると言われています。 なお、染色家は染の色を引き出すためにアルカリが必要なので灰のアクを使います。 面白いですね。
2.灰の乾燥
アクを取り除いたら、灰泥を鉢に移して 天日に乾燥させます。
この時、鉢に布を敷いておくと乾燥が早いし、後の処理が楽になります。
乾燥後、ふるいにかけて細かな灰のみを使います。
3.釉薬の調合
基本的には、長石と木灰をある比率で調合します。比率は、大体 6:4の割合です。長石と木灰だけでは素焼きの素地に付きにくいので、カオリンを少し加えます。
いつも気を遣うのが、釉薬の粘度を決める加える水の量です。以前は粘度計を使っていたのですが、最近では使わず、釉薬につける時間により釉薬の厚さを調整しています。写真1枚目は 桜灰釉と斑唐津釉です。写真2枚目は 素焼きの皿と桜灰釉を施釉した皿です。
4.釉薬をテストし、本焼きへ
自宅のガス窯でテストピースを焼成して、釉薬が溶ける温度を把握しておきます。 溶ける温度が低すぎる場合には、わら灰を加えることもあります。 ただし、このテストは参考程度です。私は 本焼きを薪窯(登り窯)で焼成するので、ガス窯のデータはあてにならないからです。 写真は、唐津皿や唐津茶碗の桜灰釉の調子です。全体的にガラス質になっており、厚い部分は白く曇って良い雰囲気です。
(2-2)斑唐津の釉薬(藁灰釉)のこと
志野釉、黄瀬戸釉、斑唐津釉(以下、斑釉と記載します)は、購入品を使っています。
斑釉は、2002年に唐津の陶芸家 松尾宗明氏から購入したものを今でも大切に使っています。
以下、当時松尾氏からいただいた、斑釉の使い方についての貴重なコメントです。
斑唐津の好きな方にも、鑑賞のポイントがわかるのではないでしょうか?
唐津の陶芸家にとっては常識的なことかもしれませんが、きちんと文章として残すことが重要と考えています。
斑釉の使い方
唐津焼の中でも特に斑唐津(斑釉)を古唐津のように発色させるのは、地元唐津の窯元でもなかなか難しく苦心しているのが現状です。
・使用する陶土としては、好みもありますが砂気が強く釉薬を吸い込む古窯唐津土が一番適しているようです。
ただし、作品は極端な薄造りをしないでください。
釉薬が胎土に溶け込みますのであまり作品が薄いと斑釉が溶ける温度では変形したりつぶれたりすることがあります。
・施釉に関しましては、素焼きした後3.0~4.0mm程度の厚さになるようにかけてください。
薄いと透明になったり胎土の色と混じったりします。施釉で重なったりして特に厚すぎる所があった場合は、カッターナイフなどで削り、
その後、水をつけた刷毛でなでて厚みの調整をしてください。
・焼成に関してましては、還元炎(象牙色に近い白か少し青みがかかる)、中性炎(白くなる)、酸化炎(一部桃色がかる)と変化し、
さらに温度が低いとくすんだりピンホールがたくさんでたり溶けなかったり、高すぎると色とび(透明になる)したり、
高台まで流れ付いたりします。なかなかできることではありませんが、理想的には還元炎で斑釉が溶けすぎる(器もつぶれる)
一歩手前が良いと言われています。
・朝鮮唐津(斑釉と飴釉の掛け分け)の場合は、斑釉に比べ飴釉の溶ける温度が低く、斑釉よりも早く溶けますので、
同じように溶かすのが難しく飴釉が高台に流れ付きますから飴釉を高台近くまで施釉しないでください。
飴釉の施釉の厚さは、2~3mm程度(乾燥した状態で少しひびが出る)を目安にしてください。上が斑釉で下が飴釉の場合は、
飴釉を先に筆ぬりして乾燥させた後、飴釉との境に隙間なく斑釉が飴釉の上にわずかに重なるように、
飴釉と重なる部分は少し厚めぶ筆塗りするか注意して掛けてください。
朝鮮唐津の陶板や皿などは、先ず飴釉を柄杓掛けして乾燥させた後、斑釉を飴釉との境に僅かに重なるように柄杓掛けして、
さらにその後、飴釉の上に僅かに重なった斑釉部分を少し厚めになるように筆塗りしてください。
・なお、斑釉の焼成温度は、棚板温度(斑唐津、朝鮮唐津が置いてある棚板)で1240~1260℃を1時間50分前後持続し、
そのあと徐冷してください、(まき窯の場合は窯自体の放射熱が持続するので、ねらしも徐冷も必要ありません。)
もちろん、斑釉をかけた作品をその窯の一番温度の上がる場所において下さい。
斑唐津に向いた土(原土)
唐津の陶芸家 川上清美氏が、特に斑唐津用に使っている土で、大きな砂目の粗い土です。 陶房を訪問したときに、記念に少しいただきました。
斑釉の理想的な発色
釉薬は理想的な溶け具合と発色をしているのですが、ちょっと行きすぎで器がつぶれてしまいました(登り窯での焼成)。
斑唐津は難しいですね。
酸化炎での発色
酸化炎によりピンク色に発色している向付(西岡良弘作)とぐい呑み(藤ノ木土平作)です。
向付の口縁の写真上部やぐい呑み下部がピンク色に発色していますが、微妙です。
還元炎での発色
最近入手した西岡小十氏の斑唐津茶碗です。斑釉と釉だまりが青色に発色していて理想的です。高台のざっくりした土味がなんとも言えません。
写真2は、上記斑釉の拡大写真で よく見ると細かな青色で縁取られた白い斑点が沢山出ていることが分かります。茶碗を使っているとこんな気づきがあります。
中性炎での発色
私の斑唐津茶碗(m0205)です。中性炎により全体に白く(部分的に黄色)に発色しています。
浜本洋好作 斑唐津茶碗
特に、唐津の陶芸家 浜本洋好氏の作品は、斑釉の青色の発色がきれいです。 以前は浜本氏の斑唐津茶碗をいくつか持っていたのですが、現在は手元にございません。