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別れの茶碗(2)
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長年の収集によりやきものがずいぶんと溜まってしまって、基本的に使っていないものを整理することにしました。 その中には思い出がつまっていてなかなか処分する決心がつかないものがあります。
 第2弾として紹介しますのは高橋光三氏の信楽茶碗です。 この茶碗はインターネットで購入しました。発送元は福岡県の秋月郵便局からでした。「秋月」という地名は葉室麟の小説「秋月記」で覚えていて、秋月城をはじめいつか訪れてみたい場所です。 秋月記では次のように紹介しています。「秋月は山に囲まれている。東は古処山を背負い、三方に山並みが続き、西側が筑紫平野に開けている。秋月の町は東西に細長く、小石原川の支流の野鳥川が盆地の中央を流れ、東西にのびる道と南北の2本の道が交差して町並みを作っていた。筑前の小京都とも呼ばれる。2本の道が交差するところが札の辻で、ここを起点に北へ向かえば白坂峠を越え長崎街道に合流する。南に出ると裏泉口を経て英彦山への道に出る。東に向かえば野鳥口を経て八丁越えへ、西は福岡口を経て甘木にいたる。」
 話を茶碗に戻します。この茶碗は今でも素晴らしいと思っています。私が所有している他の信楽茶碗は胎土の上に自然釉が掛かっていて土の良さがみえなかったり、「暗さび」というような色調のものが多いのです。 それに比べて、この茶碗は自然釉が掛かっていない部分が多く、長石の粒が混じった信楽土の良さを堪能できます。正面の2か所には鮮やかなオレンジ色の緋色が出ていて いわゆる「明るさび」の茶碗と言えます。見込みには程よく自然釉が溶けてスムースな面で茶筅すれも少ないのも良い点です。見込みの周りの内壁はオレンジ色の胎土が取り巻いています。まさに、信楽らしい土を活かした茶碗です。この信楽茶碗にお茶を入れると、オレンジ色の緋色に抹茶の緑色が美しく映えます。この色の取り合わせが実に良いと思います(下記写真2)。
 本茶碗はメルカリに出品しても人気がなくてしばらく売れませんでした。私は、伝統的で信楽の土味を堪能できて本当に良い茶碗だと思っていました。 ところが、買い手が現れたのです。海外のお客さんです。メルカリは海外への発送はしていないので、国内のバイヤーが代行して購入し海外へ発送するビジネスが流行っているようです。 私は大歓迎です。転売目的の人や、値段だけで判断し、やきものの価値がわからない人には譲りたくないのです。むしろ、日本の伝統的なものや、やきものそのものに興味を持っている人に使ってもらいたいのです。こうして、秋月から来た茶碗は海外へ渡ることになりました。
 30年程前に信楽町の高橋光三氏の窯を訪ねたことがあります。光三氏と私はほぼ同年齢です。このとき光三氏に穴窯で焼成した作品を見せてもらい、その作品に感銘を受けました。特に、凄い窯変の三角花入れが気に入って欲しいと言うと、光三氏は直近の個展に出品予定で譲れないと言う。それでもどうしても欲しいとかなり粘ったら、あまりに熱心だったからでしょうか「気は心だ」と言って値段を少しだけ安くして譲ってもらえました。このときの花入れが下記写真3の信楽窯変三角花入れです。本茶碗と花入れはこういった若き日の一コマを鮮烈に思い起こしてくれるものだったのです。

信楽窯変三角花入 高橋光三作
信楽茶碗 高橋光三
抹茶の緑が映える
緋色に抹茶の緑が映える
信楽窯変三角花入
信楽窯変三角花入 高橋光三
羽鳥湖高原の秋
信楽の色は秋にぴったり @羽鳥湖高原

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