小十の唐津向付

冒頭の唐津向付は西岡小十の作品でインターネットオークションで入手しました。
5客組でそのうち4客の口縁に欠けがありました。共箱はありません。こういったものは転売が難しく業者は欲しがらないので、私のような唐津好きには狙い目なのです。2回のオークションで落札しました。最初のオークションでは最後まで強気の競合者と競ったのですがあまりに高値になったために諦めました。ところが、数週間後に同じ出品者から再出品されました。前回の落札者がキャンセルしたというのです! ということで2回目のオークションではあっさりと落札できました。
4客のうち1つはすでに金継ぎがされていましたがあまり上手ではありません。前の所有者は金継ぎを試みたがうまくいかなかったので他の3客はそのままだったのかもしれません。
早速、欠けの部分を漆で補修しました。小さな欠けの2客は寂び漆を付けて乾燥に3日間、さらに表面を磨いて弁柄漆を塗って3日間乾燥して補修は完了です。弁柄塗りのみで金蒔きはしません。
少し大きめの欠けある1客は、刻苧漆(こくそ)を欠損部に埋めて乾燥に2週間、あとは同様に錆び漆、弁柄漆で仕上げました。
さっと描いた花の絵が良いですね。1つ1つ絵柄、焼き具合(色合い)が微妙に違います。今日はどれにしようかと楽しめますね。ひっくり返すとボリューム感のあるざっくりとした土肌と高台がいかにも小十の作品です。
この向付はけっこう大振りです。絵が書いてある丸い部分の径は11.5cm、深さは4.5cmほどあります。使い勝手がよさそうです。アイスクリームを盛ったり、お吸い物や豚汁、肉じゃがを入れたりと使っています。正月にはお雑煮を入れようと思っています。使ってみて気が付いたことがあります。4隅の窪みは箸を置くのに良いのです(下記写真参照)。
唐津の器で思い出すのが、かつて唐津の老舗の旅館に宿泊したときのことです。ここでは夕食に唐津の陶芸家 中里隆氏の器が使われるので楽しみにしていましたが、出てきた器のほとんどに欠けがありました。ここに2度ほど泊まりましたが同様でした。料理を電子レンジにかけるために器の欠けを補修していないのかと思いました。しかし、日本酒のぐい呑みの口縁にも欠けがあって唇が切れるのではないかと心配しました。こういったものを平気でお客に出すのはどうかと思いました。
翌日、西岡小十のご子息の西岡良弘さんの凌雲窯を訪問しました。そして、欠けのない斑唐津の向付2客を譲っていただきました。




